皆さんこんにちは!
今日は、公式LINEアカウントの質問でも特に多い「腹式呼吸」について掘り下げて書いてみたいと思います。
音源と動画付き記事中にブレス音源、記事の最後に呼吸に関する解説動画を載せています。
腹式呼吸と、声帯運動を別々に考えてしまうと本質から外れてしまいますので注意です!
では、いってみましょ〜!
腹式呼吸と声帯の関係
まず、最初に「腹式呼吸」自体はとても大切です。
ただし、腹式呼吸だけでは歌は上手くなりません。
なぜかというと、
腹式呼吸で作られた呼気(吐く息のこと)を声に変換するのは声帯だからです。
簡潔に書くと、空気を押し出す「強さ」や「上手さ」が腹式呼吸の技術。
その空気を声に変換するインターフェースが声帯です。
ですので、いくら腹式呼吸の技術が高くても、その空気を声に変換するのが下手であれば歌は上手くいきません。
これが過去記事でも書いている、腹式呼吸だけでは歌は上達しないという意味です。
例えば、腹式呼吸での呼気コントロールが完璧でも、地声発声の際の閉鎖筋側の技術やコントロール(内筋も含む)が不完全であれば地声発声の際の余計な息漏れ症状は改善しません。
腹式呼吸と声帯は協調してこそパワーを発揮します。
単体では、意味を成しません。
— U-ma(ユーマ) (@MVS_music) 2018年11月19日
「腹式呼吸で沢山吸う」という間違い
もう1つ、大切なことを書きます。
スクール生でも「空気を腹式呼吸で沢山吸う」クセがあったシンガーさんがとても多いです。
これも間違いです。
歌が上手いシンガーは例外なく、吸気量は少ない(多量には吸わない)のです。
なぜかと言うと、少量の空気量でも声帯が空気を綺麗に声に変換できるためロングトーンからスタッカートまで多量の空気量を必要としません。
空気量が無駄に多いとコントロールが繊細にできずに表現に支障をきたします。
厳しい言い方をすると、肺いっぱいに空気を吸うなどは論外です。
常に余った空気を吐き出す動作が生まれたり、あるいはその多量の空気を消費しないと声が上手く出ないという悪い発声を長引かせることになります。
そのような声に悪影響を与える生理的作用が横隔膜にはあります。
『筋緊張性呼吸調整』と言いますが、こんな難しい言い回しは覚えなくても大丈夫です。
重要なのは作用です。
『筋緊張性呼吸調整』とは、「横隔膜は空気を吸えば吸うほど、反発力を失いますよ」という現象のことです。
つまり空気を吸えば吸うほど、声にはパワーが伝わりにくくなるのです。
しかもそれは体が持つ生理的現象の一つなので避けられません。
発声学者のフースラーも、
「横っ腹が出るほどに空気を吸い込む呼吸をすると、徐々に声は失われる」
と書き残しています。
ここまで書きましたが、腹式呼吸の特に吸気に関する技術は歌にとっては小さな問題であり、大きな問題は呼気側(声帯も含めた技術となるため)なのです。
呼気を声帯がコントロールできるようにトレーニングする。
そのコントロールと腹式呼吸が密接に手を繋いでいる状態を目指すことが本当の意味で「腹式呼吸の扱いが上手い歌手」という事になります。
歌う際に肺いっぱいに空気を吸い込む人が多いですが、
「横隔膜は空気を多く吸い込むと筋緊張は少なくなる」
のが生理学的な事実です。吸い込む量が多すぎれば、逆に声に変換するパワーには変わりにくいということです。
— U-ma(ゆーま)/ボイトレ本執筆中♪ (@MVS_music) 2019年2月23日
では最後に参考音源を載せます。良いブレスパターン(上の音源)と悪いブレスパターン(下の音源)です。
例:良いブレス
例:悪いブレス
まとめ
まとめ①腹式呼吸だけでは歌は絶対に伸びない
まとめ②腹式呼吸=空気調節の「上手さ」や「強さ」
まとめ③声帯=空気を声に変換するインターフェース
まとめ④空気を吸えば吸うほど「声にパワーは伝わりにくくなる」
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