皆さんこんにちは!
本日のテーマは「腹式呼吸」についてです。
皆さんも腹式呼吸については聞いたことがあると思いますし、発声においては第1に腹式呼吸が大切だと指導する先生もいらっしゃることでしょう。
では、果たしてこの腹式呼吸は発声においてどれほど大切なのでしょうか?
私自身、ボイストレーニングを習っていた時代はかなり腹式呼吸をメインに練習していました。
声を出す際もお腹に意識を傾けながら、常に腹式を意識する感じです。
それからのちに、
医学を学び発声学を勉強するにつれ腹式呼吸の発声における位置づけも理解できてきました。
結論から言うと、腹式呼吸は大切ですが腹式が上手くなっても歌の上達とは直結しません。
どういうことかと言うと、歌を形作る要素の中では優先順位があり、1番大事なのは声帯レベルのコントロール技術や筋力バランスだからです。
言い換えると声帯レベルのトレーニングをやらずに腹式呼吸だけ上手くなっても歌の上達には限界があるということです。
では、もう少し分かりやすく腹式呼吸について考えていきましょう。
腹式呼吸は歌の良し悪しを決める主役ではない
ここで2つの例をとって、お話しましょう。
例①例えば、ヨガのインストラクターの方のように腹式呼吸をマスターしている方とカラオケに行ったとしたら、腹式呼吸をマスターしている方は声が安定していたり、高低や強弱を上手に歌えるでしょうか?
恐らく殆どの方は発声に問題を抱えています。
例②これもよくあるパターンなのですが、全盛期に美声を響かせていた歌手が晩年期になると明らかに声の衰えを感じさせることがあります。
こういった歌手の場合、歌の良し悪しを腹式呼吸が決定していたとすれば何十年も続けていた呼吸法を突如として下手になってしまったのでしょうか?
この2つの例で、お伝えしたいのは「発声の良し悪しを決める大きな要因は腹式呼吸ではない」ということです。
これはとても重要な情報です。
先ほどお伝えした通り発声の良し悪しを決める最重要項目は声帯レベルの問題なのです。
ですので、①の例のように腹式呼吸をマスターしていても声帯レベルの問題を解決していなければ歌は上手く歌えません。
そして、②の例のようにかつては声帯レベルに問題がなかった歌手が晩年期に声帯を動かす筋力バランスなどの低下により歌唱力に陰りが出てきても腹式呼吸は、それをフォローできるほどの役割を果たせません。
歌の良し悪しを決める主役は「声帯そのものを動かす技術」
①と②の両方に共通しているのは「腹式呼吸をマスターしていても声帯を取り巻く問題により歌唱に何らかの制限がかかっている」ということです。
この事実は、ボイストレーニングにおいて本質的な問題であり、直視しなければならないことです。
いくら補助的な役割(腹式呼吸、姿勢、共鳴、構音などなど)をトレーニングし、発声の主役にしてしまいたくても残念ながら発声の主役は「声帯そのものを動かす技術」なのです。
最後に余談にはなりますが発声生理学の権威でもある、リードやフースラーの書物でも腹式呼吸における解説には殆ど重きを置いていません。
リードは「浅すぎなければ良い」という程度であり、フースラーは「吸気(息を吸うこと)よりも呼気(息を吐くこと)の問題を解決すること」と書き記している程度です。
このように日本国内の主流メソッドのほとんどがメインに置いている腹式呼吸ですが発声の主役でない以上、練習の軸にする必要もないということです。
私のスクールでもレッスン冒頭の1〜3分ほどしか腹式のトレーニングは行いません。なぜなら他に時間を費やすべき大切なトレーニングが沢山あるからです。
例えば、腹圧を常に強くかけることが必要なのか?と考えます。
低音域と、高音域の声帯にかかる腹式の圧力は明らかに差があります。
一定の圧力を常にキープする(常にお腹に力を入れる等)ことは利にかなっていません。— U-ma☆ボイトレマニア (@MVS_music) 2018年1月21日
まとめ
まとめ①腹式呼吸は大切だが発声のメインではない
まとめ②腹式呼吸が上手いのと、歌が上手いのは比例しない(歌の良し悪しを決める重要項目ではないため)
まとめ③歌の良し悪しを決める一番の原因は「声帯を動かす技術そのもの」である
腹式呼吸だけでは歌の上達には限りがあるから、しっかりと声帯にアプローチしていこう♪