
皆さんこんにちは!
さて、本日のテーマに通じることなのですがボーカルスクールを運営する中で、ここ近年の間での生徒さんの移り変わりで感じることがあります。
それは「趣味で歌が好きな方達が専門的な情報(技術)を求めている」という風潮に変わってきているということです。
数年前であれば、僕のスクールで指導しているような医学的な知識や、高度な歌唱技術を求めていた生徒さん達というのは、プロ志向の方や、普段から演奏をすでに行っているシンガーの方達が多かったんです。
ところが近年は、需要のバランスが移り変わりプロ志向の方やプロの方以上の割合で、アマチュアの方(趣味の方)が激増しています。
その理由は情報社会に世の中が移り変わり、プロにしか知り得なかった情報が広く一般の方にも知れ渡るようになったことに起因しています。
ただ、今回の記事はこのようなボイストレーニング需要の移り変わりについて書きたいのではありません。
そのような方達が増えるいっぽうで「専門的な知識を追い求めるばかりに発声の本質を見誤る方達も増えている」という危惧について記事にさせていただきたいと思います。
深い知識は無くても大丈夫
例を1つ。
AくんとBさんの2人のシンガーがいます。
・Aくんは発声について深い知識を持っています(声帯を取り巻く筋群や神経系の知識、発声時の音質分類や共鳴腔などの知識まで深く勉強しています)が、まだ声を自由に扱うことができません。ミックスボイス習得も未だ成し得ていません。
対照的に、
・Bさんは発声についての細かい知識(Aくんのような)は知らないもののトレーニングを経て、声を自由に扱えるようになり、ミックスボイスも習得できています。
果たしてこの2者は、どちらがシンガーとして凄いのでしょうか?
当たり前ですがBさんです。
声を自由に扱えるシンガーほど、完成されたシンガーはいません。
深い知識を入れるタイミング
スクールのレッスンでも知識と技術は両輪で伸ばしていきます。
(上級者になればなるほど発声学の知識は深くなります)
ですが深い知識を教えるタイミングは技術が伴ってからでも大丈夫です。
例えば、裏声の強化が進むとヴォーチェディフィンテ(ファルセット優位のミックス)という裏声に少しだけ地声のパンチを持たせた声が習得できます。
(生徒さんによっては、この声が出た際に地声と勘違いする方もおられます)
このような音質の声です
トレーニングの中で、この声を完成させた時に相応の知識を伝えるのがベストのタイミングなのです。
逆に、ヴォーチェディフィンテの発声準備が整っていない時に、その声を発声している時の声帯の状態や、関連筋群、感覚的な事柄を伝えるとどうなるか。
その早まって知った知識を利用して、フライング(準備が整っていない)で新たな発声に飛びついてしまうのです。
残念ながら世の中の成長できないシンガーの大半がこのパターンに陥ります。
知識はあるのに技術が伴わないということになってしまうのです。
大切なのは本質を知ること
発声上達において大切なことは本質を知るということです。
では、発声の本質とは何か?
実は、いつもこのブログを読んでくださっているあなたは答えられます。
第一回目からのブログ記事、そしてYouTube動画でも、少しずつですが本質のみを伝えています。
(ミックスボイスの概念、2声区、声帯は直接コントロール不可能、音質で声帯を統制する、などなど)
僕は、1週間で声が自由に扱えるようになる!とか、声帯(喉)の形を操れば自由に声が扱えるようになる!とは口が裂けても言えません。
そのどれもが本質とは、あまりにもかけ離れているからです。
「自分は発声に関する知識が少ないので上達できない」と思っている方が、もしいれば安心してください。
発声上達のためにはメインテーマ(本質)となる知識さえあれば大丈夫なのです。
発声が上達してくれば、細かい知識を学んだ時に腑に落ちることも多くなります。
まとめ
まとめ①細かい知識を入れすぎることで上達が後退するリスクもある
まとめ②正しい知識を選別することを意識する(魔法のように早くて楽なトレーニングは存在しない。筋力強化だけを考えてみても1週間でムキムキになるということになるので、おかしいと気付くことが大切)
まとめ③知識で1番大切なのはメインテーマ(本質)(これさえ忘れなければ少しづつでも上達できるという知識)